暑い日（光壊）

多分、扇風機は過去の産物になってると思う。
まだ続きます。

よろしければ、下へどうぞ。







暑い日



「おい」

その言葉と共に、読んでいた本を閉じる。

「んー？」

返ってきたのはマヌケな返事。

「……暑ィ」

「ふーん」

そいつは気にしない。

「暑ィんだけど」

俺はもう一度繰り返す。

「……ふーん」

キレた。この暑さのせいもあるかも知れねぇ。

「暑ィって言ってんだろーが！
とっとと離れろ、むしろ俺の部屋から出てけ、このアホクラッシュ！」

俺の背中に寄り掛かっていたクラッシュが、やっと離れる。

「……フラッシュのバーカ」

ドアの閉まる音。
いくら小声で言っても聞こえてんぞ、コノ野郎。

あぁ、やれやれ。やっとこれで、少し涼しくなった。
さて、本の続きでも読みますか。

「どこからだっけな……」

勢いで閉じてしまったせいで、どこまで読んだのか分からない。

くそ、あいつのせいで……！
ぶつくさ文句を言いながら、お目当てのページを探し出す。

あった。結構、すぐに見つかった。
ため息を一回吐き、そのページを開く。

多少不機嫌になっても、本を読み進めていくうちに、忘れてしまう。
まだ俺の知らない新しい知識、それを得る喜び。

そして、それを誰かと共有する楽しさ。

「おい、クラッシュ」

声を掛けて初めて気付く。
そうだ、自分で追い出したのだ、と。

何とも形容しがたい虚しさが襲ってくる。
ついでに、恥ずかしさも。

「あー……」

今さらながら、後悔する。
せめて、離れろ、とだけにしておけば良かったと。

本を読む気も失せた。

謝るか？いや、そんな恥ずかしい真似は出来ねぇ。
でも、アイツ傷ついてるかもしんねぇし。
バーカ、いつもの口喧嘩だ。そんくらいで傷つくワケねーだろ、ほっとけ。

色々な考えが頭の中を巡る。

どれが正しいものか、どれを実行しようか、迷う。


くそ、全部暑さのせいだ。この暑さを恨みがましく思う。

あー、ちくしょう。
どうすれば、いいんだろうか。